物件確認(物確)とは
物件確認とは、不動産会社が物件の空室状況や販売状況を確認する業務のことを指します。賃貸物件・売買物件の両方に必要な作業であり、不動産仲介業務において欠かせない仕事のひとつです。
物件情報は通常、複数の不動産会社間で共有されていますが、契約が成立した際の情報更新が即時に行われないケースがあります。レインズ(不動産流通標準情報システム)や各種ポータルサイトの更新が遅れると、すでに契約済みの物件に別のお客さまが申し込みをしてしまうといったトラブルが発生するおそれがあります。
このようなリスクを回避するために、物件を所有・管理している不動産会社や管理会社に直接確認するのが「物件確認」の主な目的です。
ほかにも、最新の物件情報を把握しておくことで営業時に活用できたり、気になる箇所や状態を確認することで物件の品質を高めるための改善提案につなげられたりなど、さまざまな理由から欠かせない業務であるといえます。
とはいえ、物件確認は一度だけでなく案件の進行に合わせて複数回行う必要があるため、多くの不動産営業担当者にとって大きな業務負担となっているのが現状です。次項からは、物件確認にまつわる課題についてみていきましょう。
物件確認(物確)にまつわる課題
物件確認は不動産取引において必須の業務ですが、さまざまな課題を抱えています。ここでは、物件確認における主な問題点とその影響を解説します。
時間と手間がかかりやすい
物件確認は、電話での確認やFAXの送受信、紙のチェックシートへの記入など、従来のやり方に頼るアナログな作業が多くを占めています。そのため問題になりやすいのが時間と手間がかかりやすい点です。
電話での確認はリアルタイムで情報を得られるというメリットがあるものの、1件ずつ対応する必要があり、担当者が不在の場合は何度もかけ直さなければなりません。
FAXでの確認作業は、書類の作成や送受信・返信の確認などに時間がかかり、効率的とはいえません。特に、複数の物件を担当する場合や繁忙期には、確認件数が膨大になり、担当者の負担は大きくなります。
こういった作業に追われて、他の業務は残業や休日出勤でカバーするということになれば、従業員の不満は高まるばかりでしょう。
トラブルやヒューマンエラーが起こりやすい
物件確認は先述の通り、電話でのやり取りや書類の確認など人の手を介する作業が多いことから、トラブルやヒューマンエラーが起こりやすいのも難点です。
特に電話での確認作業では、「伝えた」「伝えていない」という認識の食い違いが生じやすく、トラブルに発展するケースも少なくありません。また、FAXでの確認においても送信ミスや受信漏れ、さらには受信した情報の転記ミスなど、さまざまなエラーが起こり得ます。
トラブルやヒューマンエラーはお客さまからの信頼を損なうだけでなく、場合によっては契約トラブルや損害賠償問題にまで発展する可能性があります。
物件確認(物確)を効率化する方法
では、物件確認を効率化する方法を紹介しましょう。
インターネットFAXを使う
物件確認でFAXを利用している場合、インターネットFAXへの切り替えがおすすめです。インターネット回線を利用することで、PCから直接FAXを送信でき、印刷や手作業による送信の手間を省けます。
インターネットFAXには、下記のようなメリットがあります。
・送信履歴や受信データを電子的に保存できる
・関連するFAXデータをまとめて保存できる
・必要な情報をすぐに取り出せる
他にも、複数人での共有も簡単で、物件確認の担当者間で情報を共有したり、上司に送信履歴を報告したりする際にも役立ちます。
物件情報のデータベース化を図る
物件確認業務の効率化には、物件情報のデータベース化が効果的です。データベース化により、物件情報を一元管理できるため、問い合わせがあった際に、担当者以外でも迅速かつ正確な回答ができます。
また、過去の確認履歴や関連書類も簡単に参照できるため、確認作業の効率化にもつながります。さらに、データベースに蓄積された情報を分析することで、物件の傾向やお客さまのニーズを把握し、営業戦略に役立てることも可能です。
物件情報のデータベース化は、物件確認の効率化だけでなく、営業活動全体の質を高めることにもつながります。
問い合わせフォーマットを統一する
物件確認の問い合わせに使用するFAXなどのフォーマットを統一することで、確認作業の効率化とミスの削減が期待できます。
フォーマットを統一するメリットは、主に下記の3点です。
・確認項目の漏れを防ぎ、確認作業の質を向上させる
・確認結果の集計やデータ入力が簡単にできる
・担当者による確認結果のばらつきを抑え、情報共有がスムーズになる
例えば、空室状況・賃料・設備などの確認項目を明確に記載したフォーマットを作成することで、確認漏れを防ぎ、正確な情報を得られます。
また、フォーマットに選択式の回答欄を設けることで、確認結果のデータ入力が容易になり、集計作業の短縮につながります。フォーマットの作成は、最初の準備に時間がかかるかもしれませんが、一度作成すれば長期的に利用できる点もメリットのひとつといえるでしょう。
直接確認では無駄を排除する
直接物件を確認する場合、移動時間や確認作業の無駄を排除していく必要があります。
複数の物件を効率よく回るためには、地図アプリなどを活用して事前に訪問ルートをシミュレーションし、最短経路で移動するのが効果的です。
また、直接確認の前には確認ポイントをリスト化し、現地でスムーズに確認できるように準備しておくことも大切です。
一般的な確認項目は、下記の通りです。
・外観の状態(外壁の劣化・植栽の状況など)
・共用部の状態(エントランス・エレベーター・駐車場・駐輪場など)
・周辺環境の変化(新規店舗のオープン・道路工事など)
物件の基本的な情報(空室状況、賃料、設備など)だけでなく、上記のようなお客さまが特に気にしているポイントも記載しておくと、より質の高い確認作業ができます。
物件確認システムを導入する
物件確認を効率化するためには、物件確認システムの導入がおすすめです。物件確認システムには、自動音声応答やチャットボットなど、種類も豊富にあります。これらのシステムは、物件の空室状況や賃料などの情報を自動で回答したり、物件の内覧予約を受け付けたりなど、物件確認をスムーズにしてくれます。
例えば、自動音声応答システムを導入すれば、電話での物件確認に対応する必要がなくなり、担当者は他の業務に集中できます。また、チャットボットを導入すれば、24時間365日、お客さまからの問い合わせ対応も可能です。
物件確認システムの導入には初期費用や運用コストがかかりますが、長期的に見れば、業務効率化や人件費削減などのメリットが期待できます。
まとめ
物件確認は、不動産取引に不可欠な業務ですが、時間と手間がかかるだけでなく、人的ミスも発生しやすいという課題があります。この課題を解決し、業務効率を改善するためには、ITツールの活用が不可欠です。物件確認にかかる時間と手間を減らし、人的ミスをなくすことで、業務の効率化が実現できるでしょう。
なお、不動産業のDX・業務効率化については、下記の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。